2019年クラシックマウスは華金で出場しました。台湾大会に向けて製作した機体で、現地の人が読みやすいように中国語読みでHuá jīn(ファージン)と名付けました。よく"かきん"とか"はなきん"と呼ばれたりしますが、日本語読みでも"かきん"は間違いなので気をつけてください。それと友人から「マシン名が酒カスで草」というリプも飛んできましたが、華の金曜日という意味でもありません。
 このマシンは今年の2月に基板を製作し、5月頃には走っていた機体です。今回の記事は、このマシンについてまとめます。

Huajin_全体 v18_2

Huajin_全体 v18_4
2セル時代のマシン(初期のデザイン)

スクリーンショット (41)
3セル化したマシン(ファンを薄くしてファンマウントも変更)

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Eagleで基板設計

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Elecrowで基板を発注

目次
  • マシンスペック
  • 華金の戦績
  • 3Dビューア
  • MAXパラメータ
  • 走行動画
  • 壁センサー配置
  • キャンバー角
  • 吸引スカート
  • フェイルセーフ
  • さいごに


マシンスペック
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  • 機体名:華金(ファージン)
  • 基板:0.8mm
  • マイコン:RX631 (100pin)
  • 壁センサー:IR発光ダイオード SFH-4550
  •       IRフォトトランジスタ ST-1KL3A
  • ジャイロセンサー:MPU6000
  • エンコーダ:AS5145B
  • モーター:駆動用 φ8.5, 20mm(AliExpressで買い漁って選別したもの)
  •      吸引用 φ10, 15mm(AliExpressで買い漁って選別したもの)
  • モータードライバ:駆動用 DRV8835
  •          吸引用 AO3400
  • ギヤ(モジュール0.3):スパー70枚歯, ピニオン15枚歯, エンコーダ38枚歯
  • キャンバー角:3度(ネガティブ)
  • バッテリー:LiPo 3S(12.6V)150mAh 30C
  • 重量(g)73
  • サイズ(mm):L100, W68, H25

華金の戦績
  • 金沢草の根大会 クラシック競技 第3位
  • 関西地区大会 クラシック競技 第4位
  • 台湾大会 クラシック競技 準優勝
  • 東日本地区大会 クラシック競技 第3位
  •         支部サーキット競技 準優勝
  • 全日本学生大会 クラシック競技 特別賞
  • 九州地区大会 クラシック競技 優勝
  • 中部地区大会 クラシック競技 特別賞
  • 全日本大会 クラシック競技 優勝

3Dビューア

※基板厚の変更が難しかったため、実機は0.8mmですがCAD上は1.6mmになっています。

MAXパラメータ
※このパラメータは本番では使用したことがありません。全日本大会で使用したパラメータはこちらに記載しております。

 加速度(加速):0-3.8m/s:28 [m/ss]
       :3.8-4.5m/s:23 [m/ss]
       :4.8-5.5m/s:17 [m/ss]
       :5.5-6.2m/s:13 [m/ss]
 加速度(減速):28 [m/ss]
 最高速度:6.2 [m/s]
 旋回速度:90deg:2.3 [m/s]
      in45deg:2.1 [m/s]
      out45deg:2.3 [m/s]
      in135deg:2.0 [m/s]
      out135deg:2.0 [m/s]
      180deg:2.0 [m/s]
      V90deg:2.0 [m/s]


走行動画
 金沢月例会でわざわざ迷路を出していただきまして、全日本大会本番では使うことができなかったMAXパラメータで走らせました。

 動画を見ると最初の旋回からずれていますし、よくこれで走れているなと私も不思議に思っています。今年は壁切れ補正を更に強化しました。横壁センサーが増えたこともあり、斜めのときと直線のときとでセンサーを変えて壁切れを見ています。
 また、斜めや櫛でも位置補正するこはできますが、パラメータを上げた時にその不安定な補正をしようとしても、姿勢制御するだけの電源の余裕がないためゲインを弱めに設定しています。その結果、パラメータを上げた際には斜めや櫛では殆ど中心を走っていません。ほぼ壁切れ補正角度補正で走っています。


センサー配置
 よく質問される点ですが、横壁センサは発光LED2つに対して受光は1つしかありません。これは発光タイミングを切り替えることによって、擬似的に2つのセンサーとして使用しています。
bandicam 2019-12-20 16-04-30-142
 複数センサーがあると壁切れ位置を変えることができます。それと、同じ角度のセンサーが2つあることで、センサー値の差分を取って柱の検出がしやすくなります。設計上は15mmずらして配置しましたが、実際には12mmしかズレていませんでした。これはフォトトランジスタの半値角が狭すぎたためと考えています。実際のところ、センサーが複数あってもソフトのみで対応できることが殆どなので、新作では横壁センサーは1つずつに戻そうと思っています。


重心バランス
 去年のマシン紹介記事でも述べましたが、2輪マウスはとにかく重心バランスが大切です。4輪だと重心が多少前後してもどちらかのタイヤには荷重が乗ってくれますが、2輪だとバランスが狂った分はすべてグリップ抜けとなり、直進安定性や旋回性能が悪くなります。前作のマシンを参考に、重量配分を考えて設計した結果が以下の動画です。
 重心が完全にタイヤ上に来て、シーソー状態にすることに成功しました。ここまで完璧に重心を乗せられると、非吸引でも旋回性能は変則四輪よりもポテンシャルが高いはずです。
この動画ではかなり車高が上がっているように見えますが、吸引スカートをつけると丁度いい車高になります。吸引スカートも、タイヤから一対一の長さになるように設計しているため、吸引力はほぼ全てタイヤに乗せられるように工夫しています。


低イナーシャ
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 重たい部品をひたすら旋回中心に寄せました。よくタイヤとエンコーダを同じ軸に固定されているマウスを見ますが、エンコーダは一番軽い部品なので、ギヤを追加してでも外に出して重い部品を真ん中に寄せます。私のマシンの場合、一番重いのはバッテリ(150mAh, 3S)なので旋回軸上に持ってきました。新作マウスでは横壁センサーを1つずつに戻そうと考えているのも、低イナーシャ化を図るためです。


キャンバー角
 去年も書きましたが、今年感じたことを追記しようと思います。
 まず、去年までは高速域の直進安定性が悪くなるのはキャンバー角をつける以上やむを得ないものと考えていましたが、それは壁補正のD項が悪さをしてました。なぜか壁を追従させるPIDの計算を変なところに書いていて、P制御+不安定項を入れて制御していました。正しく1ms割り込みで計算させたところ、きれいに壁を追従してくれるようになりました。大会では最高6m/sで走らせましたが、全くブレることなく中心を走っていました。
 次に、キャンバー角をつける利点について追記です。左旋回時のタイヤの負荷を図に示します。
bandicam 2019-12-20 21-00-43-506
 重心は地面よりも必ず上にあるため、左旋回時は右のタイヤに大きく荷重が乗ります。地面と垂直方向にかかる力は、自重と吸引力です。地面と平行に掛かる力は遠心力になります。その力の合成は図に示す通り斜めになります。よってタイヤもこのベクトルに合わせて斜めにし、力の合成とタイヤを垂直に近づけることで旋回時にニュートラルキャンバーよりも大きなグリップを発生させることができるはずです。ちなみに、私がなぜ3度に拘っているかというと、R35GTRが標準で3度ついているらしいというただそれだけの理由です。今度詳しく計算してみるつもりですが、あまり角度をつけても加速度時にグリップが出なくなるので兼ね合いが難しいところです。
 また、キャンバー角をつけると車高が狂います。どこを軸にして3度付けるかによっても変わってくるので、3DCADを用いて車高を確認することをオススメします。


吸引スカート
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 吸引スカートは前作同様2層構造になっています。1次スカートは紙フェノールを0.7mm厚にCNCで薄くしてから外形を切削しました。ここで注意点ですが、基板と1次スカートと2次スカートを接着する厚みも計算に入れないといけません。私がよく使用している両面テープのナイスタックは、厚さが0.15mmあるため、2枚使うと0.3mm厚となり無視できない厚みが生じます。これに全日本の2周間前に気づき、車高が設計値よりも低いことを知りました。今まで段差が越えられないのは2輪のせいにしてきましたが、段差が0.3mmでもあるとタイヤが浮いてしまいフェイルセーフがかかっていました。
 1次スカートが1mmになり、2次スカートは0.1mmで合計1.1mmのスカートになります。この厚みは車高に効いてくるので、初めて吸引機構を搭載する人は気をつけてください。
 2次スカートの素材はまだ試行錯誤しています。去年は秋月の透明なチャック袋を使用していましたが、今年はN先生が昔使っていたという情報を聞きつけて秋月の帯電防止青色チャック袋を使用してみました。こちらのほうが薄い素材で吸引力が安定しました。もっといい素材がないか日常的に探し回っています。柔らかく薄い素材が適していますが、簡単に捲れるものは使えません。


フェイルセーフ
 吸引マウスを作る前にフェイルセーフは確実なものを実装するべきです。モータの定格を無視した設計をしていると、タイヤがロックしたり無負荷で高速回転させると確実にモータの寿命を縮めます。特にモータの許容回転数を超えるとブラシが激しく摩耗するため、そのために入れているフェイルセーフをひとつ紹介します。
 モータが全力で回転してしまう一番の要因は、角速度フィードバック中に機体を持ち上げたり目的の動作ができなくなった際に暴走やベイブレード(高速回転)することが殆どです。これは全力で機体を回転させようとタイヤが左右逆向きに回転している状況です。よって、左右のタイヤの速度差が一定値以上になったらフェイルセーフをかけるという処理を入れれば良いです。具体的には、左右の速度差が50ms間9m/s以上になったらフェイルセーフをかけるように設定しています。
 試走会で機体を持ち上げたらビュンビュン言ってるマシンが多く見られたため、これは公開しようと思いました。是非参考にしてみてください。


加速度を複数設定する
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画像はクリックすると拡大表示します。
 この図は初速0から16区画直進させて停止した際の速度追従とモータの印加電圧のグラフです。0.7秒の間に起きた現象を1msごとに記録しています。
 加速時の加速度は三段階に分けています。
0.0-4.0m/s:28 [m/ss]
4.0-5.0m/s:20 [m/ss]
5.0-6.0m/s:15 [m/ss]
減速時は一律に0.0-4.0m/sの加速度を使用しています。ここまで加速度が上がると、電源の余裕ではなくタイヤのグリップが危ういため、グラフ的に余裕があっても迂闊に加速度を上げられません。
 加速度を複数設定すると、デューティ100%近くを維持することができるようになります。バッテリ電圧よりモータの目標印加電圧が多少オーバーしても速度は追従するため、そこまで神経質になる必要はありません。バッテリ電圧は加速時に一気に落ち込むので、モータの目標電圧と一緒に表示させることをオススメします。ここまで落ち込むのは、モータの端子間抵抗が小さすぎることと、このバッテリは3年前にAliExpressで買って以来ハードな使い方をし続けているせいもあります。
 それとモータの定格は3倍からと言われますが、許容回転数はなるべく守ったほうが良いです。大体高級モータだと12000rpmから14000rpmが主流です。私が使用しているドローン用のモータは許容回転数が高く、6m/s時に22000rpmくらいで回しています。高級モータよりもドローン用が熱いということは前から感じており、3年間同じ種類のモータを使い続けてきました。
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 以下まとめです。
  • モータの定格3倍以上でデューティ100%付近を維持する
  • モータの許容回転数は守ったほうがいい(守ってるとは言ってない)
  • バッテリ電圧の落ち込みに注意
  • バッテリ電圧よりモータの印加電圧が多少オーバーしても速度は追従する


さいごに
 キャンバー族増えてほしい!

以上です。