A's LabⅡ

アスラボと読みます。マイクロマウスやロボトレースの大会に向けて、機体の構造設計・回路設計・基板設計・プログラミングを中心に行っています。趣味のパワーエレクトロニクス系では、テスラコイルやコイルガンなどを製作・評価・改善を繰り返しています。興味を持って頂ければ幸いです。アドバイスや質問、感想などございましたらコメント欄にお願いします。 また、私のブログは背景が暗めの設定を想定しているため、白背景では文字が読みづらい点があります。

備忘録

2019年クラシックマウス 華金(HuaJin)について

 2019年クラシックマウスは華金で出場しました。台湾大会に向けて製作した機体で、現地の人が読みやすいように中国語読みでHuá jīn(ファージン)と名付けました。よく"かきん"とか"はなきん"と呼ばれたりしますが、日本語読みでも"かきん"は間違いなので気をつけてください。それと友人から「マシン名が酒カスで草」というリプも飛んできましたが、華の金曜日という意味でもありません。
 このマシンは今年の2月に基板を製作し、5月頃には走っていた機体です。今回の記事は、このマシンについてまとめます。

Huajin_全体 v18_2

Huajin_全体 v18_4
2セル時代のマシン(初期のデザイン)

スクリーンショット (41)
3セル化したマシン(ファンを薄くしてファンマウントも変更)

DzYVCv2U8AAMogl
Eagleで基板設計

D0imfsoUYAAflNl
Elecrowで基板を発注

目次
  • マシンスペック
  • 華金の戦績
  • 3Dビューア
  • MAXパラメータ
  • 走行動画
  • 壁センサー配置
  • キャンバー角
  • 吸引スカート
  • フェイルセーフ
  • さいごに


マシンスペック
EGF4BM-UcAE0LUO
  • 機体名:華金(ファージン)
  • 基板:0.8mm
  • マイコン:RX631 (100pin)
  • 壁センサー:IR発光ダイオード SFH-4550
  •       IRフォトトランジスタ ST-1KL3A
  • ジャイロセンサー:MPU6000
  • エンコーダ:AS5145B
  • モーター:駆動用 φ8.5, 20mm(AliExpressで買い漁って選別したもの)
  •      吸引用 φ10, 15mm(AliExpressで買い漁って選別したもの)
  • モータードライバ:駆動用 DRV8835
  •          吸引用 AO3400
  • ギヤ(モジュール0.3):スパー70枚歯, ピニオン15枚歯, エンコーダ38枚歯
  • キャンバー角:3度(ネガティブ)
  • バッテリー:LiPo 3S(12.6V)150mAh 30C
  • 重量(g)73
  • サイズ(mm):L100, W68, H25

華金の戦績
  • 金沢草の根大会 クラシック競技 第3位
  • 関西地区大会 クラシック競技 第4位
  • 台湾大会 クラシック競技 準優勝
  • 東日本地区大会 クラシック競技 第3位
  •         支部サーキット競技 準優勝
  • 全日本学生大会 クラシック競技 特別賞
  • 九州地区大会 クラシック競技 優勝
  • 中部地区大会 クラシック競技 特別賞
  • 全日本大会 クラシック競技 優勝

3Dビューア

※基板厚の変更が難しかったため、実機は0.8mmですがCAD上は1.6mmになっています。

MAXパラメータ
※このパラメータは本番では使用したことがありません。全日本大会で使用したパラメータはこちらに記載しております。

 加速度(加速):0-3.8m/s:28 [m/ss]
       :3.8-4.5m/s:23 [m/ss]
       :4.8-5.5m/s:17 [m/ss]
       :5.5-6.2m/s:13 [m/ss]
 加速度(減速):28 [m/ss]
 最高速度:6.2 [m/s]
 旋回速度:90deg:2.3 [m/s]
      in45deg:2.1 [m/s]
      out45deg:2.3 [m/s]
      in135deg:2.0 [m/s]
      out135deg:2.0 [m/s]
      180deg:2.0 [m/s]
      V90deg:2.0 [m/s]


走行動画
 金沢月例会でわざわざ迷路を出していただきまして、全日本大会本番では使うことができなかったMAXパラメータで走らせました。

 動画を見ると最初の旋回からずれていますし、よくこれで走れているなと私も不思議に思っています。今年は壁切れ補正を更に強化しました。横壁センサーが増えたこともあり、斜めのときと直線のときとでセンサーを変えて壁切れを見ています。
 また、斜めや櫛でも位置補正するこはできますが、パラメータを上げた時にその不安定な補正をしようとしても、姿勢制御するだけの電源の余裕がないためゲインを弱めに設定しています。その結果、パラメータを上げた際には斜めや櫛では殆ど中心を走っていません。ほぼ壁切れ補正角度補正で走っています。


センサー配置
 よく質問される点ですが、横壁センサは発光LED2つに対して受光は1つしかありません。これは発光タイミングを切り替えることによって、擬似的に2つのセンサーとして使用しています。
bandicam 2019-12-20 16-04-30-142
 複数センサーがあると壁切れ位置を変えることができます。それと、同じ角度のセンサーが2つあることで、センサー値の差分を取って柱の検出がしやすくなります。設計上は15mmずらして配置しましたが、実際には12mmしかズレていませんでした。これはフォトトランジスタの半値角が狭すぎたためと考えています。実際のところ、センサーが複数あってもソフトのみで対応できることが殆どなので、新作では横壁センサーは1つずつに戻そうと思っています。


重心バランス
 去年のマシン紹介記事でも述べましたが、2輪マウスはとにかく重心バランスが大切です。4輪だと重心が多少前後してもどちらかのタイヤには荷重が乗ってくれますが、2輪だとバランスが狂った分はすべてグリップ抜けとなり、直進安定性や旋回性能が悪くなります。前作のマシンを参考に、重量配分を考えて設計した結果が以下の動画です。
 重心が完全にタイヤ上に来て、シーソー状態にすることに成功しました。ここまで完璧に重心を乗せられると、非吸引でも旋回性能は変則四輪よりもポテンシャルが高いはずです。
この動画ではかなり車高が上がっているように見えますが、吸引スカートをつけると丁度いい車高になります。吸引スカートも、タイヤから一対一の長さになるように設計しているため、吸引力はほぼ全てタイヤに乗せられるように工夫しています。


低イナーシャ
bandicam 2019-12-20 16-52-13-049
 重たい部品をひたすら旋回中心に寄せました。よくタイヤとエンコーダを同じ軸に固定されているマウスを見ますが、エンコーダは一番軽い部品なので、ギヤを追加してでも外に出して重い部品を真ん中に寄せます。私のマシンの場合、一番重いのはバッテリ(150mAh, 3S)なので旋回軸上に持ってきました。新作マウスでは横壁センサーを1つずつに戻そうと考えているのも、低イナーシャ化を図るためです。


キャンバー角
 去年も書きましたが、今年感じたことを追記しようと思います。
 まず、去年までは高速域の直進安定性が悪くなるのはキャンバー角をつける以上やむを得ないものと考えていましたが、それは壁補正のD項が悪さをしてました。なぜか壁を追従させるPIDの計算を変なところに書いていて、P制御+不安定項を入れて制御していました。正しく1ms割り込みで計算させたところ、きれいに壁を追従してくれるようになりました。大会では最高6m/sで走らせましたが、全くブレることなく中心を走っていました。
 次に、キャンバー角をつける利点について追記です。左旋回時のタイヤの負荷を図に示します。
bandicam 2019-12-20 21-00-43-506
 重心は地面よりも必ず上にあるため、左旋回時は右のタイヤに大きく荷重が乗ります。地面と垂直方向にかかる力は、自重と吸引力です。地面と平行に掛かる力は遠心力になります。その力の合成は図に示す通り斜めになります。よってタイヤもこのベクトルに合わせて斜めにし、力の合成とタイヤを垂直に近づけることで旋回時にニュートラルキャンバーよりも大きなグリップを発生させることができるはずです。ちなみに、私がなぜ3度に拘っているかというと、R35GTRが標準で3度ついているらしいというただそれだけの理由です。今度詳しく計算してみるつもりですが、あまり角度をつけても加速度時にグリップが出なくなるので兼ね合いが難しいところです。
 また、キャンバー角をつけると車高が狂います。どこを軸にして3度付けるかによっても変わってくるので、3DCADを用いて車高を確認することをオススメします。


吸引スカート
DSC_19742
 吸引スカートは前作同様2層構造になっています。1次スカートは紙フェノールを0.7mm厚にCNCで薄くしてから外形を切削しました。ここで注意点ですが、基板と1次スカートと2次スカートを接着する厚みも計算に入れないといけません。私がよく使用している両面テープのナイスタックは、厚さが0.15mmあるため、2枚使うと0.3mm厚となり無視できない厚みが生じます。これに全日本の2周間前に気づき、車高が設計値よりも低いことを知りました。今まで段差が越えられないのは2輪のせいにしてきましたが、段差が0.3mmでもあるとタイヤが浮いてしまいフェイルセーフがかかっていました。
 1次スカートが1mmになり、2次スカートは0.1mmで合計1.1mmのスカートになります。この厚みは車高に効いてくるので、初めて吸引機構を搭載する人は気をつけてください。
 2次スカートの素材はまだ試行錯誤しています。去年は秋月の透明なチャック袋を使用していましたが、今年はN先生が昔使っていたという情報を聞きつけて秋月の帯電防止青色チャック袋を使用してみました。こちらのほうが薄い素材で吸引力が安定しました。もっといい素材がないか日常的に探し回っています。柔らかく薄い素材が適していますが、簡単に捲れるものは使えません。


フェイルセーフ
 吸引マウスを作る前にフェイルセーフは確実なものを実装するべきです。モータの定格を無視した設計をしていると、タイヤがロックしたり無負荷で高速回転させると確実にモータの寿命を縮めます。特にモータの許容回転数を超えるとブラシが激しく摩耗するため、そのために入れているフェイルセーフをひとつ紹介します。
 モータが全力で回転してしまう一番の要因は、角速度フィードバック中に機体を持ち上げたり目的の動作ができなくなった際に暴走やベイブレード(高速回転)することが殆どです。これは全力で機体を回転させようとタイヤが左右逆向きに回転している状況です。よって、左右のタイヤの速度差が一定値以上になったらフェイルセーフをかけるという処理を入れれば良いです。具体的には、左右の速度差が50ms間9m/s以上になったらフェイルセーフをかけるように設定しています。
 試走会で機体を持ち上げたらビュンビュン言ってるマシンが多く見られたため、これは公開しようと思いました。是非参考にしてみてください。


加速度を複数設定する
bandicam 2019-12-20 16-23-46-255
画像はクリックすると拡大表示します。
 この図は初速0から16区画直進させて停止した際の速度追従とモータの印加電圧のグラフです。0.7秒の間に起きた現象を1msごとに記録しています。
 加速時の加速度は三段階に分けています。
0.0-4.0m/s:28 [m/ss]
4.0-5.0m/s:20 [m/ss]
5.0-6.0m/s:15 [m/ss]
減速時は一律に0.0-4.0m/sの加速度を使用しています。ここまで加速度が上がると、電源の余裕ではなくタイヤのグリップが危ういため、グラフ的に余裕があっても迂闊に加速度を上げられません。
 加速度を複数設定すると、デューティ100%近くを維持することができるようになります。バッテリ電圧よりモータの目標印加電圧が多少オーバーしても速度は追従するため、そこまで神経質になる必要はありません。バッテリ電圧は加速時に一気に落ち込むので、モータの目標電圧と一緒に表示させることをオススメします。ここまで落ち込むのは、モータの端子間抵抗が小さすぎることと、このバッテリは3年前にAliExpressで買って以来ハードな使い方をし続けているせいもあります。
 それとモータの定格は3倍からと言われますが、許容回転数はなるべく守ったほうが良いです。大体高級モータだと12000rpmから14000rpmが主流です。私が使用しているドローン用のモータは許容回転数が高く、6m/s時に22000rpmくらいで回しています。高級モータよりもドローン用が熱いということは前から感じており、3年間同じ種類のモータを使い続けてきました。
CmHu4PgUYAEwmxX
 以下まとめです。
  • モータの定格3倍以上でデューティ100%付近を維持する
  • モータの許容回転数は守ったほうがいい(守ってるとは言ってない)
  • バッテリ電圧の落ち込みに注意
  • バッテリ電圧よりモータの印加電圧が多少オーバーしても速度は追従する


さいごに
 キャンバー族増えてほしい!

以上です。

2018年クラシックマウス「Aventa」について

 2018年クラシックマウスはAventaで出場しました。このマシンは10月中盤に基板と3D部品を発注し、1ヶ月間でデバッグと調整を行った機体です。今回の記事は、このマシンについてまとめます。

目次

  • マシンスペック
  • 基板の配線
  • 高速パラメータ
  • キャンバー角
  • 壁センサー配置
  • 3Dプリント造形
  • 吸引スカート
  • 探索走行
  • マシンの失敗点
  • まとめ


マシンスペック

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  • 機体名:Aventa(アヴェンタ)
  • 基板:1.0mm (前期:黒, 後期:黄色)
  • マイコン:RX631 (100pin)
  • 壁センサー:IR発光ダイオード SFH-4550
  •       IRフォトトランジスタ QSD124(前壁用), ST-1KL3A(横壁用)
  • ジャイロセンサー:MPU6000
  • エンコーダ:AS5145B
  • モーター:駆動用 φ8.5, 20mm(AliExpressで買い漁って選別したもの)
  •      吸引用 φ10, 15mm(AliExpressで買い漁って選別したもの)
  • モータードライバ:駆動用 DRV8835
  •          吸引用 AO3400
  • ギヤ(モジュール0.3):スパー70枚歯, ピニオン15枚歯, エンコーダ38枚歯
  • バッテリー:LiPo 2S(7.4V)150mAh 30C
  • 重量(g)78
  • サイズ(mm):L85, W70, H30


基板の配線

 プリント基板の設計はEagleを使いました。最近はバージョンがころころ変わるので、慣れた頃にまた新しいバージョンが出るという不具合が起こっています。

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bandicam 2018-10-14 19-16-42-963


高速パラメータ

 例年は全日本で使ったパラメータを詳しくまとめていますが、今年は走りきれなかったので細かいことは書きません。動画のパラメータは参考に載せておきます。


行き
  • 加速度:加速時17[m/ss], 減速時20[m/ss]
  • 旋回速1.8[m/s]2.2[m/s] (訂正:この動画は恐らく1.7[m/s]2.0[m/s]のものでした
  • 直進最高速:5.6[m/s]
帰り
  • 加速度:加速時12[m/ss], 減速時15[m/ss]
  • 旋回速:1.5[m/s]2.0[m/s]
  • 直進最高速:3.0[m/s]

 高速域の壁補正がうまく制御できておらず、3.5[m/s]以上の直進はフラつく時があります。斜め直進時は角度補正で走らせているので、5[m/s]以上でも安定して走れています。現状では壁補正を切って角度追従させたほうが安定するので、壁の追従制御が今後の課題です。 この点はニュートラルキャンバーの変速四輪が安定するため有利です。


キャンバー角

 適度なネガティブキャンバー(以下「ネガキャン」)は美しいですよね。今作のマウスにはキャンバー角をネガティブ方向に3度つけました。ホイールだけでなく、モーターからエンコーダまで全て3度傾ける必要があるため、マシン設計が大変になります。ピタゴラスの定理を用いながら、モーターの高さ、車高の調整、自作磁気式エンコーダの軸合わせ等を行いました。ネガキャンにする利点と欠点は以下のとおりです。

メリット

  • オシャレ、美しい、ロマン
  • 高速旋回で接地面積を最大にする
  • 荷重移動を味方にする
  • 賢くトレッド幅の増加

デメリット

  • 高速域の直進安定には制御の強化が必要
  • 直進加減速で最大のグリップ力を発生できない

(結論、今年の全日本の迷路ほんとやめてほしい)


高速旋回で接地面積を最大にする
 ネガキャンは見た目だけで、常時タイヤの接地面積が減って動力性能を落とすという誤解があるようですが、適切にキャンバー角をつけて高速旋回すると、ニュートラルキャンバーよりも接地面積が増加します。ここでポイントとなるのが高速旋回です。タイヤがヨレるくらい高速な旋回をしないと、接地面積は稼げません。実車の場合は横Gをしっかりかけてやらないと意味がありませんが、マウスの場合はタイヤがすり減ってくると、図のように偏摩耗します。

bandicam 2018-12-13 14-52-28-725

大げさに書いているので、”オシャレ、美しさ”から離れてしまっていますが、今は気にしないことにします。実際のマウスの偏摩耗具合を見ても、有効に広い面積を使えていそうです。

DSC_0710

荷重移動を味方にする
旋回時荷重移動した際、片輪に荷重が集中します。このとき、荷重の乗った1輪のタイヤが旋回をサポートするように働きます。上図のAとBではBの方が円周が大きいので、1輪のタイヤでもタイヤ径に差が発生します。遠心力により重心移動をさせて片輪に荷重を乗せれば乗せるほど曲がりやすくなります。今作のマウスは、バッテリーを機体の中心に立てて乗せています。ネガキャンのマシンでは重心移動も旋回に有利に働くため、マシンをコンパクトにする方に注力しています。

直進安定性についてですが、直進時には両輪に同程度の荷重がかかるため、マシンが精度良く作られていて、制御がしっかりしていればブレることはありません。そんなうまいこといかないので苦労させられます。

トレッド幅の増加
 トレッド幅を大きくしたければ、ホイールにスペーサを入れればいいだけの話ですが、キャンバー角を付けることによって、旋回軸の慣性モーメントを小さくしたままトレッドを広げることができます。トレッド幅を同じにした際、ネガキャンの方が重たいものを内側に寄せることができています。マシンの中心にモーター等が寄るので、その分のクリアランスを考慮する必要があります。

 また、ネガキャンのホイールにスペーサを入れると、トレッド幅を広げると同時に車高を落とすことができます。マシンの様子を見ながら、ツライチになるまでスペーサを入れて車高を落としましょう。

直進加減速で最大のグリップ力を発生できない
 理論上の利点は色々ありますが、あまり倒しすぎてもいけません。直進時は接地面積が減っている状態になり、直進加減速時で不利になります。タイヤを偏摩耗させて接地面積を増やした場合は直進安定性が悪くなります。クラシック競技の場合、加速度よりも旋回速を上げたほうが楽にタイムが伸びそうなので、適度なキャンバーは有利と判断して採用した次第です。ここは頑張って制御で補います。


壁センサー配置

 横壁センサーの向きが少し特殊な配置をしており、なぜこんなことをしたのか質問を受けました。個人的に横壁センサー配置のポイントとしていることは、壁切れ位置と角度です。壁切れの位置は図の「壁切れポイント1-3」に示すとおり、大きく分けて3パターンに分けられます。

bandicam 2018-12-06 21-29-05-496
 それぞれに利点と欠点があり、論争が起こる場所ですが、私は「壁切れポイント1」の柱より奥を見ています。このためには、センサーに大きな角度をつけるか、距離を離す必要があります。センサーに大きな角度を付けた場合を考えます。

bandicam 2018-12-10 01-15-01-433
 図に示すように仮想センサー2を追加して、マシンに10度の傾きをつけてみました。この図から壁切れ位置が大きく影響されることがわかります。なるべくセンサーの角度は小さくしたいものです。

センサーと壁の距離は、遠すぎても近すぎても問題があります。遠い場合はセンサー値が低くなり、壁の読み違いが多くなります。この問題は、半値角が低く高輝度のLEDを採用し、フォトトランジスタに高精度なものを使用することにより、ある程度解決できます。この機体は前壁と横壁でフォトトランジスタを変えていて、横壁の方に高精度な物を使っています。近すぎる場合の問題点として、センサー値の飽和が挙げられます。壁との距離を近づけているはずなのに、センサー値が上がらない、逆に下がっていく現象のことです。LEDの発光量を減らすことである程度解決できますが、減らしすぎるとやはり壁の読み違いが起こります。


3Dプリント造形

 モーターマウント、ファンマウント、ホイール、吸引ファン、シムリング、エンコーダの磁石ホルダ付きギヤ(モジュール0.3)をDMM.make3Dプリントサービスで製造しました。

bandicam 2018-10-17 01-39-33-338

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 材質はアクリルのウルトラモードの黄色で5,100円(送料込み)程度です。価格は高めですが、一般家庭用の3Dプリンタでは出せない精度で造形してくれます。クラシックマウスに使うとすぐ割れる等の噂があり不安でしたが、軽さと自由度の高さは魅力的なので、一度使ってから考えようと思い造形を依頼しました。やってみた結果、一度もハードが壊れることなくシーズンを終えました。意外となんとかなるものです。これはモーターが軽いことが効いていると思います。個人的には、モーターマウントにアルミを使うよりも、アクリルを使ったほうが曲がらなくていいと思います。割れたら交換すればいいだけの話なので。OB会の時に先輩方から、アクリルは湿気によって脆くなるという話を伺いました。CNCで切削できるものは、なるべくPOMを使ったほうが良いそうです。


吸引スカート

 吸引スカートは2層構造になっています。1次スカートと2次スカートに分けられ、1次スカートには両面基板、2次スカートには秋月のチャック袋を使いました。生基板は決して軽くはありませんが、腹下に配置できるので低重心化を狙えるということと、基板の強度を上げてくれるメリットがあるので、あえて重い両面基板を用いました。

DSC_0491

 写真は製作途中のもので、1次スカートの内側の2次スカートをカッターナイフで切り抜きます。基板の裏面にジャイロなどの部品を取り付けているため、1次スカートの厚みは1.6mmにしましたが、少し分厚かったので次回作は薄くします。写真では写っていませんが、マシンの先端にもシートを張り、2次スカートが捲れないようにしています。吸引ファンの3Dモデリング画像も参考に載せておきます。

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 吸引力は動画のとおりです。Z軸の角速度をゼロにするようにPID制御をかけつつ、逆さまにしたりできます。この動画はTwitterで39,000件ほどのインプレッションをいただきました。



探索走行

 今回実績を得たものはフル迷路全面吸引探索です。

bandicam 2018-12-10 14-26-54-241

 これが全面探索を終えたログデータです。フル迷路では、吸引探索、全面探索共にはじめての試みでしたが、無事マップデータを作ることに成功しました。今回は安全をみて1.0[m/s]で探索を行いましたが、部室の16*8区画の迷路では1.3[m/s]の全面探索に成功しています。来年の地区大会では更に安定感を上げて、その速度でお見せできればと思います。

 参考に1.3m/s探索の動画です。


 今まで探索中の既知区間加速をやろうと思ったことがありませんでしたが、どうせ旋回速を上げるなら探索タイムも上げたいので、今後既知区間加速の実装も行います。


マシンの失敗点

レギュレータの発熱
 今回の回路は約8Vのバッテリー電圧から3.3Vにリニア・レギュレータで降圧し、その電力でモーター以外を賄っているので、とにかく発熱が酷くて何度も火傷しそうになりました。レギュレータは降圧分の電力が熱に変換されて熱くなるので、変換効率がとても悪いです。そこで、手持ちのDC-DCに換装しました。

DSC_0709

DC-DCはスイッチング電源なので、インダクタの内部抵抗やスイッチング損失程度の発熱しかありません。換装したことにより発熱が殆どなくなりました。配線が雑なので偶にマイコンのリセットがかかったり、断線したりします。

重心バランス
 重心バランスはマシン設計のときに一番重要視する部分です。しかし、作ってみないとわからないところがあり、毎年マシンを思いっきり改変している私からすると、過去のマシンも参考になりません。設計段階で後ろ重心かなと思いながら製作し、更にDC-DCが後ろに乗った事により、少し後重心になってしまいました。吸引モーターに大きめのモーターを使っているのも、バランスをとるためです。吸引モーターを小型にした場合、基板の裏面に鉄板を貼り付けてバランスを取る必要があります。2輪マウスは重量バランスが非常にシビアです。次回作では、最初からDC-DCを搭載することを前提として重量バランスの整ったマシンを設計します。

角加速度の上げすぎ
 2輪で重心バランスがある程度しっかりしているマウスは本当に素直に動いてくれます。探索程度の低速であれば角加速度を無限にしても走れます。しかし、そんな物理的によろしくない目標値を与えて調整しても、路面が少し低摩擦になるだけで制御が破綻してしまいます。部室の迷路は割とグリップできる路面だったので、そこで調整してもツルツルな板の上では走れません。完全に失敗でした。来年は角加速度を落として安全に曲がれる機体を持っていきます。

壁センサーのキャリブレーション

 今までは最短走行時に壁切れができればいいな程度のアバウトな制御でしたが、今回から壁切れで距離補正を厳格化して走行するように制御を変えました。その変更が仇となり、会場の照明の違いで誤差が大きくなり、走らなくなったと考えられます。試走会で路面の問題なのか苦手パターンの問題なのかと悩んでいましたが、会場の照明の問題だった可能性があります。次回の大会までには会場で簡単にセンサー値をキャリブレーションする機能を実装します。

全日本のパラメータ選択
 これはマシンの失敗点ではなく、私が全日本でやらかした失敗です。最短走行の1走目でコケたにも関わらず、2走目でパラメータを上げてしまいました。速い旋回のほうが入念に調整していたのでそれを使いましたが、スタートを切って2回目の旋回で姿勢が乱れてフェイルセーフがかかりました。そして最短3走目、モードを暗記できていなくてパラメータ選択をミスりました。来年は地区大会をできるだけ回って、人為的ミスを少なくするようにします。もしかすると、吸引の2次スカートが乱れていたかもしれません。そこを見直しておけばよかったと後悔しています。結局、最短走行の4走目は斜め走行をしない1.0[m/s]の小回りターンで完走しました。クラシックマウス歴3年ですが、斜め走行できなかった全日本大会はこれが初めてなので残念です。


まとめ

 今年の全日本大会は悔しい結果に終わってしまいましたが、今までのマシンよりも遥かにハイスペックなものが作れたので良しとします。今わかっている失敗点は最低限改善して、次に備えたいと思います。そして今年からクラシックマウスは初級者向け(教育用)の競技として位置付けられてしまったようなので、マイクロマウス競技(旧ハーフサイズ)のマシンも製作していきたいと思います。

 最後に今まで製作してきたクラシックマウスの集合写真で締めたいと思います。来年こそは吸引しながら斜め走行を決めたいです。

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